Index  ≫  企画

web拍手お礼小話1

web拍手のお礼用として書き上げたショートショートです。
今回のテーマは「なぞなぞ」。
一つのなぞなぞをキーにして、各ペアがいろいろな反応を示します。
ペアはアンケートを取らせて頂いた結果、
「金色のコルダ」より、火原&香穂子、土浦&香穂子、金澤&香穂子、柚木&香穂子
1枠余ったので「Colors」より、晶&草一郎(+陽史&美弦)の5組です。

ちなみになぞなぞは
「愛があればベッドの上や車の中で出来ること、少し疲れるけどいい気分になれること、なんだ?」 でした。
答えは、このページの下の方にあります。



火原和樹&日野香穂子 (金色のコルダ)
 「香穂ちゃん、香穂ちゃん!」
「どうしたんですか? そんなに急いで」
「あのさっ」
香穂子の前に立つと火原はがしっと、香穂子の両肩を掴んだ。
「なぞなぞなんだけど!」
「は?」
僅かに眉を顰めた香穂子に構わず、火原は先を続ける。
「愛があればベッドの上や車の中で出来ること、少し疲れるけどいい気分になれること、なーんだ!」
「え?」
香穂子は戸惑った顔を火原に向ける。火原はにこにこ笑って、ただ香穂子の答えを待っていた。
(愛があればベッドの上や車の中で出来ること………で………)
火原の出したなぞなぞを頭の中で繰り返した香穂子は、導き出した自分の答えに僅かに頬を上気させる。
(って、そんなワケないし! なぞなぞよ!? なぞなぞなんだから、もっとこう、ひねりのきいた答えなのよ!!)
一気に恥ずかしさが込み上げてきて、香穂子はその答えを振り払うように大きく首を横に振った。
「か、香穂ちゃん?」
香穂子の動きに火原が首を傾げている。
「なななななんでもないですっ。えっと、えっと答えですね!」
しかし動揺した頭では何も思いつかない。
(ううううっ。わたし、なんかいやらしい!? いやーっ)
結局、しびれを切らした火原が答えを言うことで、なぞなぞは解決したが、その後しばらく火原を見るたびに香穂子は赤面する羽目になってしまった。


土浦遼太郎&日野香穂子 (金色のコルダ)
 「なぞなぞ?」
「そう、なぞなぞ」
僅かに眉を上げた土浦に、香穂子は元気よく頷いた。
「何だ、急に」
「だって、土浦君パズル好きって言ってたし」
「パズルとなぞなぞは微妙に違うんだが………。まあいいか。んで? どんななぞなぞなんだ」
「えっとねー。いい? 愛があればベッドの上や車の中で出来ること、少し疲れるけどいい気分になれることはなんでしょう?」
「はぁ?」
香穂子は答えを知っている余裕からであろう、笑って土浦の答えを待っている。
(なぞなぞってんだから、普通に考えちゃあ駄目だよな)
視線を少し上に向けて土浦は頭の中でなぞなぞを繰り返す。
実は、なぞなぞを聞いてすぐ思いついたものがあったのだが、それはなぞなぞの答えにしては、果てしなく不適切なものだったので却下した。それで改めて答えを探してはいるのだが、さっき思いついた解答ばかりが頭の中に残ってそこから思考が先へ進まない。
「ねえ、どう?」
あまりに黙っている時間が長かったのか、香穂子がしびれを切らして促してきた。
「もうちょっと待て。考えさせろ」
まともな答えを出さないと、こちらが恥ずかしいだけで終わってしまう。
「んじゃあ、ヒントね」
「おう」
「土浦君が考えてるようなえっちいことじゃないからね」
「なっ」
反論しようにも、自分でもそうだとわかるほどに顔を赤くして反応してしまったのでは、何の反論も意味はない。
香穂子は若干意地の悪い笑みを口元に浮かべて土浦を見ていた。


金澤紘人&日野香穂子 (金色のコルダ)
 「またけったいなもんにはまってるなぁ」
ふぅっと煙を吐き出した後に、金澤はそう言った。
「それで、答えわかりますか?」
香穂子は下から金澤の顔を覗き込む。
金澤の姿を見つけて全速力で駆け寄ってきた香穂子は、口を開くやいなや「愛があればベッドの上や車の中で出来ること、少し疲れるけどいい気分になれることはなんですかっ!?」とそう言ったのである。
白昼堂々、人目のあるところで何を言い出すんだ、こいつは、と思ったのは一瞬のこと。香穂子が今言ったフレーズに聞き覚えがあった。
「なぞなぞか?」
訊ねると、息を整えていた香穂子が頷いたのだった。そして冒頭のせりふへ続く。
「お前さん、わからないのか」
「全然。先生、知ってるんですね、答え」
「そらまぁなぁ。よくあるなぞなぞだろうが。………教えて欲しいか?」
「是非!」
「じゃあ、身をもって教えてやろう」
「えっ?」
香穂子の顔が赤くなって、青くなって、また赤くなった。
思わず吹き出しそうになるのを堪えて、何食わぬ顔つきで金澤は香穂子の肩に手を回した。
香穂子が何を考えたのか、よくわかる。それがおかしい。
「えっ!? せ、先生、あのっっ」
抵抗感のある香穂子の体を前へと促しながら、金澤は歩き出した。
「答えを知りたいんだろう?」
「それは、その、そうですけどっ。あの、でもっ」
あまりの慌てように、金澤は我慢できなくなった。盛大に笑い出す。一度笑い出すと今度は止まらなくなった。
その横で、香穂子がぽかんと立ち尽くしていたが、しばらくすると自分がからかわれたことに気づいたのだろう。「もういいです!」と強く言って、すたすたとその場を去っていった。
香穂子が去っていった後も、金澤の盛大な笑い声は収まることなく響き渡っていた。


柚木梓馬&日野香穂子 (金色のコルダ)
 「今日ひとつなぞなぞを教えて貰ったんです」
「そう。どんな?」
穏やかに柚木は香穂子に笑いかけた。
「愛があればベッドの上や車の中で出来ること、少し疲れるけどいい気分になれることはなんでしょう、っていうのなんですけど」
「ふぅん………」
どこかで聞いたことがあると気づいて、それが今日の昼休みに火原が柚木に対して問いかけてきたなぞなぞと同じだった。どうやら火原は香穂子にも質問をしたらしい。火原はこのなぞなぞがいたくお気に召したようだった。誰彼構わずなぞなぞを出して回っているのだろう。
「日野さんは答えがわかったの?」
「それがわからなくて………」
香穂子は見てわかるほど肩を落とした。
「先輩、わかります?」
「うん」
「え、すごい!」
香穂子は尊敬の眼差しを柚木に向ける。こんなことで尊敬されても嬉しくないが、香穂子にそういう目を向けられるのはまんざらでもない。
「答えを知りたい?」
「はい」
迷わず頷く香穂子を見て、むくっと意地悪な気持ちが柚木の中で首を持ち上げる。
「じゃあ、ちょっと耳を貸して」
「はい」
素直に耳を柚木のほうへ向ける香穂子に苦笑が漏れる。柚木はその耳に顔を近づけると、穴にふぅっと息を吹きかける。
瞬時にして香穂子は柚木から飛び退った。息を吹き込まれた耳を両手でかばい壁に張り付く香穂子の顔はこれ以上なく真っ赤になっていた。柚木はそれを見てくすくすと笑い声を漏らす。
「そんなに簡単に俺が答えを教えるわけがないだろう?」
何かを言い返したいのだろうが、香穂子はただ口をぱくぱくさせるだけで、そこから声が出てくることはなかった。
面白そうにそれを見て、柚木は更に笑った。


青海草一郎&赤城晶+黄山陽史&茶谷美弦 (Colors)
 「………………」
「………………」
昼休みの中庭。
昼食を終えた晶と草一郎は並んで座りながら、お互いに無言だった。
草一郎の手の中には読みかけの文庫本が開かれているが、彼の目は閉じられているし、考え込むときの癖で眉間に皺が寄っている。
一方の晶は、その視線を前へ投げ出した足の先へと向けていた。そこから動かない。こちらも何かを考えている風情だ。
ちょうどそこを通りかかった陽史は二人の様子に思わず足を止めていた。陽史の隣を歩いていた美弦もそれに倣う。
「難しい顔して何考えてんの?」
陽史の声に二人揃って顔を上げた。
「あ、こんにちわー」
ぱっと笑顔になって挨拶をしたのは晶だ。それに対して陽史は「こんにちわー」と同じように返し、美弦も軽く頭を下げた。草一郎だけが何も言葉を発さない。いつものことなので、誰も気にも止めないが。
「いまですね、なぞなぞの答えを考えていたんですよ」
「なぞなぞ?」
「はい。愛があればベッドの上や車の中で出来ること、少し疲れるけどいい気分になれること、なんだっていうなぞなぞなんですけどね」
「答えがわからない?」
こくこくと晶は頷いた。肯定は示さないが、考え込んでいたということは草一郎もわからないのだろう。
「ほんとに?」
陽史は二人の顔をまじまじと交互に見つめた。
そんなに難しいなぞなぞだっただろうか。陽史はこのなぞなぞを知っていたが、そこまで真剣に悩み込まなくてもわかるものだと思うのだが。
「ちっとも? 何にも思いつかない?」
また頷く晶に、更に眉間に皺を寄せる草一郎。
途端に陽史はおかしくなって笑い始めた。隣で美弦も口元を抑えて笑いを堪えているふうである。
「何がおかしい」
むすっとした草一郎の声が聞こえたが、その程度では陽史の笑いは収まらない。
「だって、めっちゃ真剣に悩んでるのが、そんな、なぞなぞって………ぶはは!」
きっとこの調子だと、このなぞなぞで連想してしまう誤答もこの二人は思いついていないのだろう。非常に二人らしい。
「放課後までわかんなかったら教えてあげるよ」
ぽかんと口を半開きにしている晶と更に眉間の皺が増えた草一郎にそう言って、陽史は美弦を連れてその場を離れた。







いかがでしたでしょうか?
お楽しみ頂けましたでしょうか?

こういうテーマを決めて、それぞれのお話を書くのは結構好きです。楽しいし。
また次の拍手お礼でもやりたいなぁと思います。



















なぞなぞの答え:献血

だ、そうです。私は解りませんでした。

Index  ≫  企画